「GOD DOCTOR」を見た

5月16日、新国立劇場で、「GOD DOCTOR」を見た。ひさびさの観劇。目当ては片桐仁。初、生、仁。

演劇大宮エリー 第一回公演 GOD DOCTOR
http://sp.eplus.jp/god/index.html
作・演出:大宮エリー
出演:片桐仁石田ひかり/松村雄基/遠山景織子山下真司板尾創路

開演前

ロビーにはたくさんの胡蝶蘭。定番の白もあったけど、なんとなく、赤紫っぽいピンクが多かった印象。いろんな芸能人から出演者向けに贈られていたので、花よりも、そちらのネームプレートを中心に鑑賞。すべての花が飾られているわけじゃなくて、名前だけがコピー用紙に印刷されたものが壁に貼ってあったりもして、そちらもじっくり鑑賞。にしても、片桐仁宛の少ないこと少ないこと。小林賢太郎の名前も見当たらず。にやにや。

本編感想〜よかったところ

さて、本編の感想。

いきなり、片桐仁(医者)と板尾さん(患者)の問診シーンから。わー、片桐仁だー、わー、板尾さんだー、って思った。観劇でミーハー魂を炸裂せずして何処にて炸裂さするか、というポリシーなので、非常にうれしい始まり方だった。

お話は、タイトルどおり、「GOD=神の」「DOCTOR=医者」の話。ゴッドなドクターを目指す5人の候補生が、板尾さん演ずる患者を「幸せ」にするために、人間世界と神世界の「ハザマ」で、なんやかんや、というお話。

六人の役者さんは、みんなそれぞれ、とてもよかった。千秋楽の前日だったから納得の完成度だったのではないか。

私は、作演出の大宮エリーのコラムが好きで、だから今回見に行ったようなところもあるのだけど、初の舞台として、非常に意欲的な作品だったなー、と思った。やりたいことをみんなやったる! という意思を感じた。

それはたとえば、要所要所で、歌を取り入れた演出があったりだとか、軽い振り付けが取り入れてあったりだとか、医者役5人が声をそろえてセリフを言うだとか、そういう要素から感じられた。

ほかには、セットが凝ってたと思う。ちなみに動くセットだった。大きなカーテンを使って影絵でセックスを表現だとかもあり、舞台ならではだなー、とか思った。

本編感想〜残念だったところ

さて、では、ちょっと残念だったところ。それは、もっとおもしろく出来たんじゃないかなー、という点。

おもしろく出来たんじゃないか、というのは、ストーリーの味という意味じゃなくて、ストレートに「笑い」の要素についてだ。

正直、もっと大笑いしたかった。前半軽め後半重め、というストーリー展開。後半はいろいろと考えさせられるところもあり、よいおとぎ話だなーと思っただけに。よいおとぎ話、という評価は、展開が読める(読みやすい)、という点も含めている。

せっかくの片桐仁せっかくの板尾創路せっかくの山下真司なのになー、とお金を払った身としては、やっぱり思ってしまったかなあ、という。これは同行の、初めて舞台を観る友だちも、同じ意見みたいだった。

作品を大切にするなら、そういう大笑いは必要なく、笑いの分量のパーセンテージは充分だったと思う。だけど、あのキャストだと期待値がどうしても跳ねあがっちゃうから、ねえ。ひとつくらいわかりやすい天丼ネタを入れといてくれててもうれしかったかなー、という感じ。素人ながら『ここのネタ、もっと引っ張ってけば、もっと大きい笑いがとれるのになー』と思ってしまう場面が、すこし多すぎた。三回天丼できるネタを二回で抑えてる感じに軽いフラストレーション、というか。

客席の関係もあるのかもしれない。平日の夜、しかも新国立劇場。大爆笑は取り辛かろう。だが、だからこそ、演劇大宮エリーには、大爆笑を積極的に取りにいってほしかったかなー。

繰り返しになるが、それぞれの役者さんの演技はとてもよかった。お目当てだった役者さんの良さをきっちり味わえた。目当てじゃなかった役者さんもよかった。石田ひかりはアニメ声がものすごくキュートだった。遠山景織子はテレビで見ていた頃から感じていた独特さをパワーアップさせていた。松村雄基はすごくいい体してた。(衣装が上半身裸に白衣、だったので。見事な胸筋をじろじろ見ることができた。あれだけでお金を取れる感じの美しい胸元だった。)
役者さんたちのチームワークのよさから「きっちり稽古してきてるなー」というのも伝わってきた。

だからこそ、笑いで軽くフラストレーションを感じてしまったところが、気になったのかもしれない。他が良かっただけに満点とって欲しかったなー、というかんじかなあ。えらそう。

本編感想〜考えさせられたところ

最後に、舞台を見て考えさせられたことを少々。

後半の、「ウソを専門とする医者」役の、石田ひかりのセリフが、いちばん私に響いた。

ウソをつきすぎて、なにがウソでなにが本当なのかわからない。今日の気分は、イタリアンなのか、それともおそばなのか、自分でもよくわからない、わからないのよ。

みたいなセリフがあって、ずーんと来た。私もわからない。イタリアンなのか、おそばなのか。自分の気持ちが、よくわからない。イタリアンなのかおそばなのかすらわからないのだから、もっと複雑な気持ちは、もっともっとわからない。困る。

でも、作中の石田ひかりは、ちゃんと自分の本当の気持ちを見つけていた。ラストシーン、見つけた本当の気持ちにぽーんと飛び込んでいた。よかった。そういう「よかった」という気持ちになれたということは、今回の観劇は私にとってよいものだった、ということだ。

だから、というわけでもないけれど、友だちと帰りになにか食べようってなったときに、「今日はパスタ!」ってはっきり言い切ってみた。新宿駅の「壁の穴」でパスタを食べた。ワインも飲んだ。白ワイン。白ワインをお店で飲むのは初めてだ。300円のグラスワインだったけど、おいしかった。

余談

アンケートを書いた。それぞれの役者さんがよかったので、それぞれの役者さんごとにひとことずつ書いた。大宮エリーにも触れた。アンケートを出して、劇場を出て、初台の駅のトイレで、「あ、板尾さんのこと書くの忘れてた」、と気がついた。物語の主役だったのに。申し訳なく思った。だから、また板尾さんで演劇大宮エリーをやったらうれしい。今度は絶対板尾さんについて書いたアンケートを出したい。

追記

そういえば、山下真司が車椅子に乗っていて、それに劇中一切触れないという演出だったのだけど、そういうところも大宮エリーがやりたいことだったのだろうなーと思った。友だちは「どこかでイジるんだろうと思ってたのになんで触れなかったんだろ」と不満そうだったけど、私はあれはあれでよかったなーと思った。でも、井上雄彦「リアル」での車椅子の取扱い方には、ちょっと及ばず、かなー。まああちらはそれが本編みたいなものだから、比べるのはおかしな話か。